長崎外国語大学で初めての講義は英語だった。昨年4月に入学した全盲の中尾清隆さん(19)。教官は「中尾君は前に来て」。いつしか最前列が指定席になった。
見えない分、聴くことに集中しなければならない。周囲が騒がしいと、聞き取りづらいこともあった。教官は口頭で説明してくれるのだが、話し方が速いと感じることも。筑波大付属視覚特別支援学校(東京都)の先生は、ゆっくりだった。
点字にも悩んだ。第2外国語としてドイツ語を受講したが、略語が英語と同じで頭の中が混同した。だが、誰にも相談できなかった。「周りの人に説明しても分かってもらえないと思い、伝えることもしませんでした」
◇ ◇
盲学校時代は自分のどこかに「隔離された気持ち。狭い場所に入れられている意識」があった。「健常者と同じところに立ちたい」。一般の大学に進学して「一歩踏み出せたような気がした」が、現実は厳しかった。
入学後にあった学生生活についてのオリエンテーション。4階ホールには多くの学生が集まった。名前を呼ばれると、シーンと、静まり変えった。先生から話をするよう求められ、「特別扱いはしないで」と呼びかけた。
いつしか話しかけてくれる人は、ほとんどいなくなった。不安がふくらんだ。「社会はそれほど優しくないよ。自分で入っていかなければ……」。入学手続きで世話になった入試広報課長の山本哲哉さん(41)に言われた言葉が頭をよぎった。
もともと、人見知り。積極的に声をかけるタイプではない。話をしたいが、見えないばかりにきっかけがつかみづらかった。孤独感や自分に焦りを感じ「昨年11、12月ごろは本当につらく、学校に行くことを考えると、眠れなかった」。
◇ ◇
「こんにちは」。そんなある日、大学のロビーで女子学生に日本語で呼びかけられた。二つ年上のアメリカ人留学生で「とてもうれしかった。必死に意思疎通した」。携帯端末で英単語を調べ、片言の英語で会話した。
彼女は学校で見かけると「今何しているの、どこに住んでいるの、どんな勉強しているの」と話しかけてくれた。英語の勉強をしに大学に来たのに、それまで会話ができなかった。「知らず知らずに同級生たちとの距離を自分で広げていたのかもしれない」
〔長崎版〕
4月17日朝刊
【関連記事】
- 県立大:短大部4年制、検討へ 資格取得など「2年では不十分」 /島根
- 夢追いかけて:全盲学生の挑戦/3 通学、学習面支援に感謝 /長崎
- キャンパる:新人記者を募集
- キャンパる・編集部から:今週ある女子大学に…
- キャンパる:東京海洋大の練習船「海鷹丸」 学生が4カ月の遠洋航海
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130417-00000145-mailo-l42
※この記事の著作権は【配信元】に帰属します。
